人魚

真っ赤な髪の女の子はきっと二人いる
一瞬のうちに入れ替わる
蕾みたいに笑うけど
振り返ったらもう違うひと
嵐のよう　怒ったり泣いたり


二人の女の子を愛せるひとはいなかった
その街には




有る時遊覧船に乗った女の子たち
美しいマンタ・レイの青年に出会う
――素敵なお嬢さん　赤い髪のお嬢さん　海の街を案内してさしあげましょう――
迷わず恋に飛び込んだ女の子たちは
大きな胸鰭につかまってどこまでも深く、どこまでも……


そして白い珊瑚のお城
どこまでもつづく水草の回廊
女の子たちは水底のお姫様になった
なんて幸せなお姫様！


……でも
いつしかマンタ・レイの旦那さまは
くるくる入れ替わって遊ぶお姫様たちに疲れてしまった
――どれが君だか分からない




真っ赤な髪の女の子たちは
見分けがつかない程そっくりなのに
誰にも気付いてもらえない


岸辺に打ち上げられた女の子
はりついた鱗を剥がそうと　水掻きの手で一生懸命
あのひとがくれた金緑石の指輪
まだこのゆびに残っている


（モデル&文章：瑛俊、メイク&撮影：motca）